愛知淑徳大学
ビジネス学部・研究科
真田 幸光 教授

1957年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、東京銀行入行。1998年愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション研究所・助教授。2004年4月より現職。
著書に「アジアの国、日本」など多数。また、NHKクローズアップ現代などTV・ラジオ出演、論文・雑誌寄稿、講演をマルチにこなす、現代の辻説法師。
信条は、最小の効果を挙げる為に最大の努力を惜しまぬ人間たれ。
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私は昨年後半より、
「米国は自動車産業を捨てる。」
と各地の講演会などで申し上げておりました。
エンジン自動車の技術力に特徴を失い、比較競争優位を失った米国自動車業界の低迷の中、米国は電気自動車のスタンダード確保に向けて、向こう3~5年で一気に「電気自動車の世界」に転換していく方向性を政策的には示し、これに技術力さえついていけば、世界の中核産業の一つである自動車産業のスタンダードはハイブリッド車には奪われず、即ち、それは日本勢に自動車業界のスタンダードを奪われないように出来るということを意図して動いていると感じています。
更に、米国はそうした戦略的意図を背景に、世界のスタンダードを押さえるため、3億人しかいない米国内市場のみならず、中国本土、インドと連携して一気に電気自動車のスタンダードを押さえに行く戦略に向かい、GMと上海汽車グループ、BYD、そしてリーバといった米中印の企業連携も念頭に置きながら、具体的な動きを示し始めていると私は見ています。
ところで、こうしたお話には前段があり、ブッシュ政権の頃、米国が突然「エタノールカー」だと言い出したのにも、ハイブリッド車拡散を抑止、或いは牽制する意図があり、GMがその間にトヨタ自動車からハイブリッドの技術供与を受けようとしたが、トヨタ側から核心技術の移転を受けられなかった、更にはトヨタ自動車は米国に於けるロビー活動を削り、それまで利益供与を受けていた米国ロビーイスト達を敵に回したといった見方が出る中で、米国勢は日本勢をある意味ではオミットする形で電気自動車のスタンダード構築に入っているのではないかと見られているのであります。
実は、米国マスコミに於ける一連のトヨタ叩きとも見られる異常な報道もこうした背景によるものではないか、そして庶民感情を揺り動かした上で、ここへ来て、米国議会、米国司法の場にもトヨタを引きずり出しているのではないかといった見方も出来るのであります。
そして、こうした動きが示される中にあって、動静を見極めている韓国でも動きが出始めています。
即ち、私が街角で聞くところでは、
「韓国では、電気自動車メーカーであるADモーターズが、1日に100キロ走行しても1カ月のガソリン代が2万ウォン(=現在の為替レートで約1,560円)から3万ウォン(同約2,340円)程度の電気自動車「オーロラ」を4月から量産し、早ければ5月にも韓国国内で発売する。」
と発表しています。
このオーロラは、1回の充電で120キロの走行が可能で、最高時速は60キロ、軽乗用車よりも若干小さく、価格は1,500万ウォンから2,000万ウォンと予想されています。
この車種は高速道路や自動車専用道路は走行できず、一般道路でも制限速度60キロの所に限り走行が許可されていますが、来月30日からは、電気自動車も一般道路での走行が可能となる見込みとなっており、今後の動向が注目されています。
最近の自動車業界の動向は、米中印のみならず、このように韓国、そして、その他の地域でも、
「一気に電気自動車の方向に動き、スタンダードも同時に、ハイブリッドをすっ飛ばして電気自動車へ。」
と移行していくように感じられ、ハイブリッドに注力、先行投資もしてきた日本勢にとってはこれが様々な意味で痛手となる可能性も出て参りましょう。
そうした意味でもこの動きは、やはりきちんとフォローしていくべきことであると思います。
尚、こうした動きの延長線上で一点、私は申し上げたいことがあります。
即ち、米国マスコミでは最近、盛んに、
「Crisis Made in Japan」
といった見出しや発言が見られ、今回のトヨタの問題を個別の問題から、
「日本製の危機」
といった表現で拡大表現し、日本のものづくりの信用力そのものを貶めるような表現をしているように私は感じられて仕方ありません。
トヨタ車の個別問題にしても、百歩譲って、事故はあったという事実は認めたとしても、
「事故と自動車の技術的不具合の関係が科学的に立証されていない段階から米国マスコミが騒ぎ立て、米国庶民感情を揺さぶっていた。」
ということに対しては、日本政府はきちんと米国政府にクレームをしてもよかったのではないでしょうか?
否、今からでも遅くない、きちんと先ずは、
「事故の原因を科学的に立証してから細かい議論に入るべきである。」
と日本政府もこの問題に、上述したような視点から、きちんとコミットしていくべきであると私は考えます。(もちろん、公平な第三者が調査した結果として、科学的に見てもトヨタの技術が原因で事故が起こったということがわかった場合には、トヨタ自動車が民間企業として個別の責任を負うことは言うまでもありません。)
今の状態では、米国の議会や司法に冷静な対応が期待できない、そんなところに我が国民を送り出すわけにはいかない、私にはそんなふうにも感じられるほど、米国のマスコミ報道は異常であると感じられますし、また、逆に米国企業が日本国内で問題を起こし、日本のマスコミが先に騒ぎ立て、その挙句、米国企業が日本の議会や司法に召還されたとすれば、米国政府はこれを断るのではないかとも私は考えます。
最近の自動車業界の動きは世界のスタンダードを巡る、世界の今後の動向を意識する上で、重要なチェックポイント、切り口ではないかと感じます。
皆様方はどのようにご覧になっていらっしゃいますか?
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