専門家コラムColumn

AI時代に求められる人材とダイバーシティ

2019.04.03

◆AIにより仕事を奪われるかもしれない障害者雇用の現場

 昨今、AIに取って代られる「職業」が話題になっています。「無くなる職業ランキング」なんていうのもよく見かけますよね。自分の「職業」がAIに取って代わられてしまうかもしれないと思いチェックされた方も多いのではないでしょうか。

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これらのランキングは「職業」という括りで区別されていますが、もっと細かい「業務」としてみた時、AIやRPA(Robotic Process Automation)の導入により自動化できる業務の領域が多い職業が上位に来ているのであろうと推測されます。今の仕事をしている中で、「自動化しやすい業務ってなんだろう?」と考え議論することも多いのですが、ある友人が「障害者雇用の現場の仕事ってなくなっちゃうんじゃないの?」と言ったことがありました。確かに、障害を持った方が従事している事務作業や軽作業は最もAIに取って代られる可能性が高いかもしれません。私たちは、AIやRPAを活用して事務作業や軽作業を自動化するソリューションを推進していますが、この友人の一言は、少し私の心にひっかかりました。障害者雇用に限らず、自分の職業が「人の仕事を奪う職業」と言われるのは心にひっかかるものがあります。

◆AI時代に障害者雇用の仕事はどう変化するか

 しかしながら、AIやRPAの普及により新たな仕事の創出があることも期待できます。2017年10月にGartnerが発表した「Gartner Predicts 2018」によると、2020年にAIによって消える仕事が180万件であるのに対して、230万件が創出されると報告されています。
創出される仕事と消える仕事の数は業界ごとに大きく異なるようですが、この変化は、障害を持った方にとって雇用が増えるチャンスになるのか否か、という点に私は関心をもっています。これまで、企業の障害者雇用の現場での仕事は、一般就労の職業の中から障害者用の事務作業や軽作業を切り出すという方法がとられているケースが大半かと思います。このやり方ですと、障害者雇用の現場の仕事は、近い将来自動化により大きく削減されてしまうかもしれません。
 そうした悲観的な見方の一方、逆の発想として大きな変化の可能性もあると考えています。これまでの障害者雇用の現場での「画一的な業務を切り出す」というやり方から、「個々の能力を発揮できる仕事を探索していく」というパラダイムシフトが生まれる可能性です。職業や働き方の変革期である今だからこそ、そういった新たな変化の可能性に期待したいと考えています。

◆AI時代に求められる人材とダイバーシティ

 これまで日本企業の多くは、マルチタスクをこなせる人材を採用・育成してきました。言い方を変えると、マルチタスクは苦手だけれども、ひとつの能力に秀でた人材は、あまり評価に恵まれていなかったのかもしれません。しかしながら、今後、マルチタスクでおこなえるような仕事の多くはAIが代替していくことになるのではないでしょうか。能力の何か一つでも尖っている、そんな個性豊かな多様な人材(ダイバーシティ)が求められるようになってくるのではないかと考えています。

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海外では既に、障害者の雇用が企業の競争優位性を保つ意味で戦略的に進められているという事例もあります。日本でも、やっと「ダイバーシティ」という言葉が叫ばれてきましたが、企業の障害者雇用において、特性を活かした職種への配置や人材の活用というのは、ほとんど実現できていないのが現状ではないでしょうか。
 AIやロボットなどのテクロノジーの参入により、企業はダイバーシティへの取り組みが必須となることでしょう。現在は、一般企業が求めている職業スキルを持っていない方が障害者とされていますが、多くの人を同じ指標で測るのではなく、それぞれの価値観を認めて能力を活かしていく時代では、障害そのものの捉え方が変わっていくかもしれません。

 

次回は、障害者雇用の現場において、先進的な取り組みをしている団体の事例を紹介し、解説いたします。

 
 
 

AI時代に人々の働き方はどうかわるのか?

来栖 香 Kaori Kurusu

AI事業戦略本部 DX推進部 ソリューション推進グループ

外資系PCメーカーのコンシューマー部門を経て、2010年にキューアンドエーに入社。広報・CSRを担当し、2018年4月よりAI事業戦略本部 マーケティング部に着任。
AI事業に携わる中で、AIが私たちの働き方に与える変化について考えるようになり、AI時代の働き方・生き方を研究中。
プライベートでは、2枚目の名刺としてCSR専門誌「オルタナ」にて、CSRに関する記事も執筆中。
立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了 経営管理学修士(MBA)。