専門家コラムColumn

(4)『ルールベース型』のチャットBotについての解説

2019.11.11

 前回(第3回)は、チャットBotについて『機械学習型』と『ルールベース型』との2種類があることを説明し、それぞれの特性や活用状況について詳しく説明した。そして、『ルールベース型』のチャットBotも『一問一答型』と『シナリオ型』の2種類があることに触れた。前回の予告どおり、第4回目の本稿では、『一問一答型』『シナリオ型』それぞれの特性や活用用途などについてもう少し詳しく解説することにしたい。

『一問一答型チャットBot』『シナリオ型チャットBot』の概要

 『一問一答型』のチャットBotは、入力欄に直接質問したい内容や質問のキーワードを入力するタイプのチャットBotを言う。

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【図表1】「ごみ分別案内」をモデルにしたチャットBotの画面イメージ

【図表1】は、自治体の「ごみ分別案内」をモデルにしたチャットBotのイメージである。入力欄に質問の内容を入力して送信すると、【図表1】の右の図のように、チャットBotが登録されたFAQ(想定される質問と回答の組み合わせ)データの中から回答を選択して返答してくる。

 一方、『シナリオ型』のチャットBotは、提示された選択肢から質問内容に該当する項目を選んでいくタイプのチャットBotを言う。

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【図表2】テレビの故障対応チャットBotのシナリオメージ図

 

 【図表2】は、テレビの故障に関する問い合わせ対応を行なうチャットBotのシナリオイメージ図である。『一問一答型』のように直接質問内容を入力するのではなく、提示されている選択肢の中から、該当する故障の状況を選択していく。【図表2】はイメージ図なので途中でシナリオが終っているが、実際のチャットBotは何度か該当する項目を選択すると、最後に回答が提示される。最近では、動画で対応方法を説明するものなどもある。
筆者がこれまで見た中では、ダイキン工業様の『ルームエアコンAI故障診断』のチャットBotが非常に良くできている。URLを貼付しておくので、興味がある方は是非ご覧頂きたい。http://www.daikincc.com/RA_AI_chatbot/

 

『一問一答型 / シナリオ型』の比較

 『一問一答型』と『シナリオ型』のそれぞれの特徴や違いについて整理してみよう。表に整理すると【図表3】のようになる。

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【図表3】『一問一答型チャットBot』『シナリオ型チャットBot』の特徴・比較

① 使い勝手や操作性について

 『シナリオ型』は、文字通りシナリオに沿って会話が展開するので、突拍子もない回答が出ることがなく、上手く質問したい内容にたどり着けば、正確な回答を得ることができる。しかし、問い合わせ内容が選択肢に出てこない場合、ユーザーはそこから先に進むことができず途方に暮れることになる。
その点、『一問一答型』は直接質問内容を入力する形式のため、ユーザーからは問い合わせ対応の間口が広いように感じられる。しかし、ユーザーの質問の仕方によっては上手く回答が出てこない場合や、見当はずれな回答が出てきてしまう場合もある。

② 構築・運用の工数

1) 構築作業の工数
最初にFAQ(構築想定される質問と回答の組み合わせ)データを構築しなければならない点はどちらも同じである。
『一問一答型』の場合、その後、ユーザーがいろいろな言葉で質問することを想定し、一つの質問に対して別の表現での質問を追加登録する作業を行っていく。例えば「お店の開店時間は?」という質問に対し、「お店は何時に開くの?」「お店は何時からやっているの?」といった質問を同じ意味として登録していく。
『シナリオ型』の場合、『一問一答型』のような質問追加作業は必要ないが、【図表2】のような質問シナリオの樹形図を作成しなければならない。両者を比較すると、『シナリオ型』の質問シナリオの構築作業の方が、手間がかかるケースが多い。
2) 運用の工数
運用開始後にFAQの追加や変更などを行なうメンテナンス作業に関しても、『一問一答型』は、FAQデータの追加や変更を行なうだけでよい。
一方、『シナリオ型』の場合、ケースによっては大規模なシナリオ樹形図の修正を行なわなければならないこともあり、運用にも工数がかかると言われている。

③ 用途の適性

 『一問一答型』は「手続き方法に関する問い合わせ」や「店舗の場所、営業内容に関する問い合わせ」など、比較的質問が明確で簡潔な問い合わせに向いている。一方、『シナリオ型』は、「システムや機器のトラブル対応、操作方法の説明」など、初めに課題の切り分けや事象の特定が必要な問い合わせ対応に向いている。

 

最新事情としては、複合化が進んでいる

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【図表4】に示すようなチャットBotの分類を説明し、それぞれの特徴や違いを説明してきた。ただ、最近(ここ1年程度)の傾向としては、それぞれの利点を組み合せた複合型のチャットBotが増えてきている。

【図表5】は、自治体の住民からの問合せ対応をモデルにしたチャットBotのイメージ図である。最近では、このように『シナリオ型』と『一問一答型』の複合モデルを良く見かけるようになった。

 また、『ルールベース型の一問一答型』と『機械学習型』の複合モデルも数多く提供されている。
                                【図表4】チャットBotの分類

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このモデルは、チャットBotの回答に対するユーザーの評価(「役に立った」「役に立たなかった」などのアンケート結果)をAIが学習していく。それにより、ユーザーからの質問内容に対する解釈力を高めていくという機能が装備されている。

 前回と今回の2回にわたり、チャットBotのタイプ分類とそれぞれの特性について説明してきた。タイプにより適した用途が異なり、運用工数やコストも異なるため、一概にどれが優れているかといった評価は難しい。
 逆に言えば、それぞれの特性を理解し、最適な選択をしなければ折角導入しても“失敗プロジェクト”に終わってしまうことになる。しかし、“AIブーム”に乗ってとりあえずチャットBotを導入してみた結果、「期待はずれ」という評価となっているケースに筆者自身もいくつか遭遇した。

 そこで当社では、昨年5月に『Q&A自動化ソリューション』という名称で、チャットBotの導入に失敗しないためのパッケージ・ソリューションをリリースした。
次回は、『Q&A自動化ソリューション』の説明を通じて、チャットBotで対応できること・できないこと、チャットBotの導入に適したコールセンターなどについて解説していきたい。

 
 
 
【図表5】「シナリオ型」「一問一答型」の複合型のチャットBotのイメージ

AIにより企業とお客様とのコミュニケーションはどう変わっていくか

西脇 紀男 Norio Nishiwaki

AI LABOリーダー・執行役員 AI事業戦略本部長

1993年大手コールセンターベンダーに入社。経営企画、営業企画、CRMコンサルティング部門の部門長を務める。2010年キューアンドエーに入社。経営企画、マーケティングソリューション事業などの部門長を経て、昨年度からコンタクトセンター事業の中期戦略を推進するAI事業戦略本部の本部長に。AI活用やオムニチャネル対応など次世代型コンタクトセンターのモデル構築、事業化に取り組んでいる。立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科修了 経営管理学修士(MBA)