専門家コラムColumn

第3回 マーケティングオートメーション(MA)を活用した顧客の発掘と育成

2019.11.06

 第2回の報告では、マーケティングオートメーション(MA)が顧客の接点を管理できるツールであることを説明しました。
スマートフォンの活用拡大に伴うデジタルマーケティングの進化により、従来型の4Pマーケティング(Product, Price, Place, Promotion)だけでは説明できない顧客動向の変化が起こっています。4P 理論は、売手側のプロダクトアウト思考による考え方でした。しかし、国内市場の縮小や低成長によって、買手(顧客)側へのマーケットインの思考が求められ、新たなマーケティングの概念が定義されています。Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客の費用)、Convenience(顧客利便性)、Communication(顧客との対話)の「4C」です。
 近年では、BtoB(法人間取引)の領域においても、スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの利用によるデジタル化が加速しており、4C+D(Digital)が今後のマーケティング戦略の中心となっていくと予測されています。そのデジタルマーケティングの領域に欠かせないツールがMAです。それでは、MAを活用した具体的な活動やその考え方について報告します。

MAの機能

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スマートフォンに代表されるICT(Information and Communication Technology)の発達によって、膨大な情報が世の中を駆け巡っています。

 このような情報量の増大という変化の中、取得した情報から自らが必要としている情報を取捨選択する顧客側の情報処理能力は、以前とそんなに変化が見られないと言われています。従って顧客は、企業が一方的に膨大な情報を提供しても、自分の基準や価値を満たす情報でなければ、反応してくれません。
 
このため顧客 のニーズにあった適切な情報提供が必要とされています。顧客の問題や関心に触れる視点をもって、接点を構築していく工夫が必要です。顧客の問題意識や関心領域は、購買の検討度合いによって異なります。従って、顧客との有効なコミュニケーションには、その検討度合いに合わせた情報発信が求められます。
 
そこで、MAでの顧客接点管理は、顧客の購買検討状況をステージと呼んで管理します。ここでは、5つのステージ に分別しファネル構造で接点を管理していく手法(図1)を説明します。5つのステージとは、「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」「エンゲージメント」「カスタマーサクセス」です。1つずつ解説していきます。


「リードジェネレーション」
このセグメントは認知のレベルにより、顧客の欲求が低い前期段階と、顧客の欲求が顕在化してきた後期段階に分かれます。顧客とコミュニケーション(接点)によってセグメントし、顧客の属性を仕分けしていきます。

「リードナーチャリング」
顕在化された顧客欲求に対して、課題という明確な目標を意識させていく段階です。課題の解決方法を段階的に提示していくことで、信頼感や親近感という関係性を構築し、顧客を育成する過程へと進んでいきます。

「リードクオリフィケーション」
課題解決に向かっている顧客は、Web、メール、イベント、DM、コールセンター、店舗などのコンタクトポイントに対し、アクセス履歴を残しています。これらのアクセス履歴から顧客の購買意思がどの段階にきているかを選別していく段階に入ります。一般的には、トラッキング(履歴の追跡)によって得られた行動履歴データにスコア付けを行い、そのスコアにより営業見込み度(Marketing Qualify Lead : MQL)を付与していきます。

「エンゲージメント」
MQLが一定のスコアに到達するとセールス(営業チーム)に引き渡されます。セールスはクロージングが可能かどうかを判断します。すべてのMQLに対してセールス活動が開始されるわけではなく、営業受領リード(Sales Accepted Lead : SAL)として保持されるケースもあります。セールスがクロージング可能と判断されたリードは、営業可能リード(Sales Qualify Lead:SQL)としてセールス活動が実施され、顧客はクロージングから購買(エンゲージメント)に至ります。

「カスタマーサクセス」
エンゲージメントされた顧客は、放置されるわけではなく、定期的な購買契約の更新が必要なサブスクリプション商材や付加価値をつけられるアップセル、クロスセルなどのアクションにより顧客との関係性の強化の段階に進んでいきます。顧客満足度の醸成や自らの成功体験から他者へ推奨するアドヴォケイト(Advocate)に発展させていきます。

MAの課題

 このようにMAは、マーケティング活動における顧客接点を管理し、その分析による購買検討度合いのスコアリング、スコアリング結果に基づく情報発信などを自動的に行うシステムツールです。
しかし、マーケティング活動は、MAに任せておけば、自動化され、自然とMQLが生成されるというわけではありません。
ma2.png 登山に例えると、頂上を目指すためには複数のルートが存在します。頂上とはエンゲージメント(購買)であり、登山ルートとは顧客の課題認識のきっかけ、課題解決の方法といえるでしょう。
 
多くの登山者が常に新しい登山ルートを考え、発見し、頂上に登っています。登山の時期においても夏山が好きな人もいれば、冬山を好む人もいます。登山者を顧客に例えると、その行動特性や志向性は様々なので、顧客をセグメント分けする方法が難しく感じられてきます。しかし、難しく考える必要はなく、「あなたは夏山と冬山のどちらがすきですか?」とダイレクトに質問してみれば解決します。
 
多くの登山ルート(課題解決方法)のどのルートを取ろうとしているのか、どちらに進むべきかを迷っているかを顧客と対話します。顧客の状態を把握しながら顧客の課題解決へ導いてあげれば、複雑な選択も精緻化され、最短で最適な顧客体験を提供できます。
 
つまり、MAによる自動化されたマーケティング活動だけに頼るのでなく、顧客の道案内を支援する機能を付加することが最適な活動といえるのです。この顧客の道案内をする機能がMAベンダーが提案している「インサイドセールス」の機能です。
 
インサイドセールスは、顧客が気付いていない潜在ニーズを、顧客との信頼や親近感を醸成しながら顕在化させて、その課題解決に導く新たなセールスチャネルといえます。
 
顧客の課題解決には、MAのデジタル処理だけではなく、顧客との実態接点情報を把握できるインサイドセールスを加えたマーケティング活動が最適といえます。

次回は、新たなセールスチャネルとして注目されている「インサイドセールス」についてレポートします。

AIテクノロジーがもたらすマーケティング手法

矢野 良二 Ryoji Yano

AI事業戦略本部 DX推進部 部長

B2B広告代理店での経験を元に、2002年B2Bマーケティングに精通したCRMマーケティングサービス事業を起業し国内ONE on ONEマーケティングの先駆者となった。2010年よりコンタクトセンターにおけるセールスマーケティングサービスに注力し、多数のインサイドセールスマーケティング事業のコンサルタントとして活躍している。現在、立教大学大学院にて経営管理学修士(MBA)を取得中。