The 対談

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」女性のキャリアアップを考える対談

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」女性のキャリアアップを考える対談
弁護士としてご活躍のほか、憲法カフェ開催や講演、執筆などにも日々チャレンジされている武井由起子氏と、当社 執行役員 コーポレート・コミュニケーション部長 安達あけるが、女性のキャリアアップについて語りました。
 
◆掲載日: 2015年1月30日
安達 武井さんは現在弁護士としてご活躍ですが、過去には企業にお勤めされていましたよね。今までの経歴を教えていただけますか?
 
武井 学生時代から上海コロニアル風の建築物に興味があったことがきっかけで、中国に大変関心がありました。語学を勉強したり短期留学も経験しました。中国関係の仕事をしたいという思いを持ち、就職活動を始めて1990年に総合商社に総合職で入社しました。
 
安達 入社後はどのような仕事に携わりましたか?
 
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武井 まず驚いたことは7,000名の従業員はほとんどが男性であることです。総合職の女性は私を入れて5名。女性はアシスタントだと思われていて、会議に出席すると珍しい目で見られたことが多々ありました。私は出世欲がなかったのですが、女性というだけで話を聞いてもらうのも難しい状態だったので、仕事をする上で自分のことを認めてもらうには付加価値をつけようと考えながら取り組んでいました。つまり、求められていることに何かプラスして工夫するということです。パイオニアとして責任を果たせば、女性の採用も活躍の場も増えると思っていました。3年間は中国室で社内の中国ビジネスのサポートをしており、そのために必要な翻訳通訳の仕事もしていました。その後、北京に2年間駐在しました。
 
安達 日本に戻られてからはどのような仕事をされていましたか?
 
武井 北京では営業部に所属していたので、本社の営業部からお声をかけていただきました。しかし経営管理の勉強ができる部門に行きたいと希望を伝えました。北京では日中合弁企業の立ち上げに携わったので、財務指標や経営分析といった知識が必要であると感じ、その知識を身につければ女性の仕事も認めてもらえるのではないかと考えたからです。希望は通り、会社の事業会社の管理をする事業部への配属が叶いました。海外事業の担当になり、経営管理として事業計画やM&A、プロジェクトファイナンスをチェックする仕事をしました。その頃、その部の先輩から、そのような経営管理のノウハウを勉強するには、中小企業診断士の勉強をするのがいいと言われて、必ずしも資格を取らなくてもかまわないということだったのに、結局1年間勉強して、資格も取りました。そして審査部に異動になった時は、海外の会計について勉強しなければと思い、また1年間勉強して米国公認会計士の資格を取りました。資格取得が続きましたが、これらは仕事を円滑に進めるためです。私が仕事で話をする方々は課長クラスの男性でしたから、若い女性の話を聞いてもらうには何らかの知識の裏付けがないと難しい、そう思いました。勉強し資格を取得したお陰で仕事が進めやすくなりました。当時はキャリアアップという発想がありませんでしたが、とにかく会社で居心地よく仕事をするにはどのようにしたらいいかを考えてのことでした。結果的にそれがキャリアアップに繋がったのでしょうか。仕事をする上で一番困るのは、何を聞いたら恥ずかしいのかということがわからないことです。これだけ勉強したので、自分がわからないことは聞いていいのではないかと思えるようになりました。勉強して一番良いことは、聞いて良い悪いという区別がつくようになったこと、と思います。
 
安達 その頃、会社を休職されましたが、何かあったのですか?
 
武井 審査担当に配属されていた時に、アジア通貨危機になり、アジアの債権回収に奔走することとなりました。何度もアジアと日本を行ったり来たりし、回収業務で成果をあげていました。おもしろい仕事でもありましたが、時として命がけの大変な仕事でした。社内の知らなかった側面も見ることができました。また、私のいた部署は、どこもほとんど私が最初の女性総合職でおっかなびっくりだったのですが、それらの部署すべてが私が異動した後、女性総合職を入れてくれたのも本当に嬉しかったです。それで、会社員は一生分やったと思って、別の道に進もうと考え、休職を申し出ました。休職期間を与えてくれて、休職中は心身ともにゆっくり過ごし、趣味を見つけ、リフレッシュする時間に充てました。
 
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安達 その期間中に、弁護士へ転身される決心をつけたのですか?
 
武井 休職中に、ある判例を機に戸籍の取り扱いが変更になるということを知り、そういうことで救われる人が大勢いるのではないかと思って、法律に関わる仕事、弁護士に関心を持ちました。思い切って退職し、ロー・スクールに入りました。
 
安達 その頃に、結婚・出産をされ、さらに司法試験にもチャレンジされて一発合格ですよね?
 
武井 おそらく40歳過ぎで、司法試験に一発合格して初産を成し遂げたのは、日本で私しかいないと思っています(笑)。
 
安達 子育てと仕事の両立は難しいですか?
 
武井 両親が近くに住んでいてよくサポートしてくれますし、夫も協力的なので助かります。子どもは保育園に入っていますが、両親が保育園に迎えに行ってくれたり、夫が早く帰宅できれば私は遠慮なく遅くまで働いています。女性が働きながら子育てをする際、サポートがある人は楽ですが、そうではない人にとっては本当に大変です。私の時は保育園の競争率は11倍でしたし、待機児童の問題や保育園の預け時間など、もう少しなんとかならないと出産をためらう女性が増えるかもしれません。
 
安達 現在、武井さんは弁護士のほかに社会貢献活動にも力を注いでいらっしゃいますが、そのお話を伺えますか?
 
武井 東日本大震災を経験して、子どもを守るためにはボーっとしていてはだめじゃないかと。特段何ができるわけではないけれど、30代~40代のママ世代たちに憲法を知ってほしいと思い、サークルみたいな形式で意見交換をする活動をしています。憲法改正や集団的自衛権、秘密保護法などニュースで耳にするけれど難しそうとか、身近に感じられなかった憲法について、少しでも知ってもらうために、紙芝居を使ったり、気軽な感じで憲法が学べるような場として「憲法カフェ」を全国各地のカフェでたくさん開催しています。これから憲法改正も議論されるようですし、平和な未来のためにはどうしたらいいか考えるきっかけとなったら嬉しいです。
 
安達 最後に働く女性にメッセージをお願いします。
 
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武井 天職って自分ではわからないと思います。会社は異動がありますから、興味のない仕事を任されることもありますが、こんな仕事は嫌だとか思わずに「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」といいますか、一生懸命取り組んでみてはいかがでしょうか。そのためには勉強することも必要でしょうが、一生懸命取り組むと、意外と適性があったりして仕事がおもしろくなりますよ。一生懸命取り組んだけれども、その仕事がもし過酷であった場合、我慢して心身を壊してはいけませんから見切りをつけるという判断も大切です。自分を客観的に見るには、人と交流することが一番です。会話をすることは精神衛生上にもいいですしね。人と繋がることが大事ということです。もう1つは、良い子になりすぎないこと。日本人は同調圧力に弱いというか、まわりの方々と合わせないといけないと思って空気を読む方が多いですが、空気は読むものではなく吸うものです。今のような高度にグローバル化した社会では、頭ひとつ抜きん出ることが求められると思うのです。「右へならえ」では、おもしろい仕事はできません。あと私は、職住を近づけすぎないとか、ジャケットを脱いだら仕事のことを忘れちゃうとか。プライベートと仕事の切り替えがうまくできるといいですね。
 
安達 たくさんのメッセージをいただきましてありがとうございました。
 
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【対談を終えて】
 
仕事を円滑に進める上で、とにかく勉強することを惜しまず、知識を身につける姿勢に感銘を受けました。頭ひとつ抜きんでる「らしさ」をアピールできるような女性に皆さんがなってほしいし、私も新しいことへのチャレンジをしていこうと思います。また、弁護士だからこその社会貢献活動である「憲法カフェ」はぜひ続けていただきたい。身近に感じられなかった憲法をわかりやすく伝え、少しでも知ってほしいという思いに共感を覚えました。(安達)
 
 
 
 

今回の取材にご協力いただいた
弁護士 武井由起子氏のプロフィール
  • 中央大学法学部卒業。伊藤忠商事株式会社を経て一橋大学大学院法務研究科修了。2010年弁護士登録。日本弁護士連合会憲法問題対策委員会幹事、特定秘密保護法対策弁護団所属。明日の自由を守る若手弁護士の会会員。一女の母。特技はお茶をいれることで、ニガテなことは弁当づくり。
     
  • 執筆:「これでわかった!超訳 特定秘密保護法」岩波書店
  著者:明日の自由を守る若手弁護士の会(共著)